
ある日、ふと「何か新しいことを始めたい」と思った。
副業の勉強でもいい。資格の勉強でもいい。前から気になっていた本を読むだけでもいい。でも、いざ机に向かおうとすると、なぜか集中できない。
理由は大きな悩みではなかった。
リビングの隅に置きっぱなしの段ボール。
洗面台の水垢。
気になっているけど後回しにしている換気扇の汚れ。
クローゼットの中で増え続ける着ない服。
子どものプリントや郵便物が積み上がったテーブル。
一つひとつは小さなことだった。
「今すぐ困るわけじゃない」
「休みの日にやればいい」
「そこまで大したことじゃない」
そう思って見ないふりをしてきた。
でも、その小さな気がかりは、毎日少しずつ頭の中に残っていた。
朝、洗面台を見るたびに「掃除しなきゃ」と思う。
帰宅して散らかった部屋を見るたびに「片付けなきゃ」と感じる。
休みの日になると「今日はやらなきゃ」と思いながら、結局疲れて動けない。
気づけば、新しいことを始める前に、頭の中はすでにいっぱいになっていた。
本当は前に進みたい。
変わりたい。
今の暮らしを少しでも良くしたい。
そう思っているのに、家の中に残った小さなストレスが、心の余白を奪っていた。
ある日、思い切って気になっていた場所を一つだけ片付けた。
たったそれだけなのに、気持ちが少し軽くなった。
部屋が整うと、頭の中も少し整う。
頭の中が整うと、「やってみようかな」と思える余白が生まれる。
新しいことができない原因は、やる気がないからではなかった。
毎日の暮らしの中にある小さなストレスが、知らないうちに自分の力を奪っていたのだと思う。